投稿日:2005-11-23 Wed
文六と志保の旧居や銀杏散る
ベストセラー作家・獅子文六(1893〜1969)と、翻訳者や評論家として活躍した坂西志保(1896〜1976)の旧居は、かって大磯にあった。
獅子文六は、「大番」や「夫婦百景」「てんやわんや」など、ユーモアと鋭い社会風刺にみちた軽妙洒脱な小説で人気を博し、1969年には文化勲章を受章している。また、岩田豊雄の名で演劇活動も盛んに行い、「文学座」顧問として劇団を指導した。
坂西志保は、『カーネギー自伝』の翻訳や『生活の知恵』などの著作で知られ、立教大学講師やNHK論説委員などをつとめた。いまTVで活躍している女性評論家やキャスターの草分け的な存在で、現代に生きていたら、猪口邦子や佐藤ゆかりのように、小泉チルドレンの一員として国会議員になっていたかも知れない。
この二人の住まいは隣接していて、坂西邸の門の左右には大きな銀杏の木がそびえ、毎年、秋になると見事な黄落を見せてくれた。
その銀杏の大木も伐り倒されて、いまは跡形もない。
二人の屋敷跡は、宅地開発されて細かい分譲地となり、所々住宅が建設されている。
私の散歩コースのごく狭い地域でも、ここ2〜3年の間に5〜6軒のお屋敷が取り壊され、ミニ開発されて、一般の住宅地に変貌している。
時代の流れといえば仕方がないが、某作家が「麻布や麹町など戦前の東京の山の手の屋敷町の風情が残っている」と感嘆した、大磯の古い別荘地の閑静な趣がなくなるのは淋しい限りだ。
新設された重要文化的景観の第一号として「近江八幡の水郷」が選定されたという新聞記事が出ていたが、明治の別荘地の歴史と文化を感じさせる大磯の屋敷町も、その候補にあげてもらいたいと思う。
そうでないと、大磯も数年後には、横浜辺りの住宅地と同じ、国籍不明の町並みがつづくフツーの町になってしまうだろう。
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