投稿日:2005-10-21 Fri
小春日や両手ひろげしマリア像
大磯カトリック教会の玄関横に立っているマリア像を詠んだ句。
この協会には、大正13年の建築で、建築学的にも貴重な資料といわれる平屋の神父館が併設されている。
イギリス人の設計で、もとは別荘として建てられたものだという。外壁の下見板や鎧戸など当時のものがそのまま残っていて、シンプルな中にもクラシックな趣が漂っている。
ちなみに「神父」とは、カトリック教会の司祭に任命された者の敬称で、プロテスタント教会の場合は、協会を主宰する教師という意味で「牧師」と呼ばれる。その住まいも牧師館というそうだ。

今月の湘南俳句会の最高点句は、牧師館を詠んだ次の句。
無花果のもがれぬままや牧師館 13点 清
作者の子どものころの貧しい時代には、大抵の家の庭先に植えられていて、実をつけるとおやつがわりに争って食べた無花果。暮らしが豊かになった現代では、せっかくたわわに実っても、もぎ取ってくれる子どもたちもなく、放置されている。
たまたま訪れた教会の牧師館で、そんな無花果の姿を見て、少年時代の思い出が甦ったのだろう。牧師館がよく効いている。
「もがれぬままや」という表出に万感の思いが込められている、味わいの深い句で、私も特選にいただいた。
作者自身の人生も無花果のように実り多いものだと思うが、誰ももぎ取ってくれる人はいない、という淋しさもあるのだろうか。
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