投稿日:2005-09-08 Thu
夏果てぬ駅に北口南口
駅を詠んだ名句は数多いが、なかでも有名なのは、安住敦の〈しぐるゝや駅に西口東口)だろう。
掲句は、その句を下敷きにしたいわゆる「本歌取り」の句である。
台風が来る数日前、久し振りに新宿に行って来た。
南口の改札口で友人と待ち合わせ、西口の「しょんべん横丁」の焼鳥屋に入り、歌舞伎町の「ゴールデン街」で酒を飲んだ。亡くなった鶴さんの思い出を語りながら、青春時代の酒飲みコースをたどったわけだ。
東京の盛り場のなかでも、新宿は一番思い出深い街だ。
大学が高田馬場にあったから、帰りには、いつも新宿のジャズ喫茶に立ち寄った。ビザール、ディグ、木馬……授業を受けていた時間よりも、ジャズ喫茶でコルトレーンやマイルスを聴いていた時間のほうが長かったような気がする。
初めて就職した会社も高田馬場だったから、よく新宿で遊んだ。その後の会社も新宿にあり、南口の改札口から通勤していた時期もある。
当時に比べると、新宿駅の西口や東口周辺はあまり変化していないが、南口の変貌ぶりは目を見張るばかりだ。
超高層ビルがそそり立ち、まるでニューヨークの街角みたいに人が群がっている。私の通っていたころの南口には、場外馬券売場ぐらいしかなかった。
あのころ、飲み屋やジャズ喫茶の薄暗い空間にたむろしていた連中は、その後、どこへ行ったのだろう。明るい南口から外へ出て、陽の当たるコースを歩んでいてくれればよいが、なかには北口から消えて行った人もいるだろう。
私自身に関していえば、この南口の改札口を利用していたころは、私の人生の歩みも確かに南の方角を向いていた、と今にして痛切に思う。
新宿ははるかなる墓碑鳥渡る 福永耕二
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